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中3週報 第38号より 「セレンディピティ」2014年02月17日

 修学館では,保護者に対するきめ細かい情報発信の一つの手段として,中1~高3の全学年,学年便り(週報)を原則毎週末に発行しています。日常の学校生活の様子等の情報を積極的に発信し,保護者との情報の共有ができればと思います。修学館のホームページでは,「学年便り(週報)から」というコーナーを設け,学年便りにあった面白い記事,感動する記事などを皆さんに紹介します。更新を楽しみにお待ちください!

 立春を過ぎたにも関わらず厳しい寒さが続く。それでも梅は咲きはじめ,寒気の中で凛とした光を放っている。 梅は毎年同じように花を咲かせ実を結ぶ。私たちも毎年同じように生きているように見えるが,年とともに成熟しながら,確実に老いていく。自然に流れる時間が円環的であるなら,人間の時間は直線的だ。私達が生きる今という瞬間は二度と戻っては来ない。だからこそ日々をどう生きるかが問われるのだ。

 「セレンディピティ(serendipity)」という言葉がある。何かを探しているとき,探しているものとは違う価値あるものに出会ったとき,それを見逃さずチャンスと捉え,自分の目的に生かしていく能力を指すらしい。偶然に出会う幸運を必然にしていく力と言ってもよい。偶然のチャンスをものにできるのは,絶えず目的意識を持って生活している人である。自分が何を求め,何をしたいのかを意識しているときに,人はチャンスを見逃さずに生かすことができる。チャンスは追いかけて引き戻すことはできない。なぜならチャンスの神様には後ろ髪がないからだ。

 割烹着姿で実験する若い女性が,生命科学の常識を破る大発見をしたと話題になっている。博士になってわずか3年の小保方晴子さんだ。彼女をリーダーとする理化学研究所などのチームが新たな万能細胞作製に成功した。マウスの細胞を弱酸性の溶液に浸すだけで,さまざまな臓器や組織の細胞に育つべく「初期化」されるというものだ。ノーベル生理学・医学賞を受賞した山中伸也・京都大教授も「京大iPS細胞研究所の若い研究者と小保方さんが協力すれば,細胞が受精卵に戻る『初期化』の謎について,大発見ができるかもしれない」と期待を寄せているという。小保方さんの発見は将来,画期的な治療の実現につながるものなのである。

 彼女は高校時代には理系科目が苦手だったので,文系学部への進学を考えていた時期もあったらしい。しかし,1冊の雑誌を手にしたことで変わる。その雑誌には,けがや病気で傷んだ組織を新しい細胞で補う再生医療が特集されていた。それをきっかけに「再生医療の研究者になる」という気持ちが芽生え,2002年早稲田大学の理工学部応用化学科へ進学する。しかもその年初めて実施されたAO入試で合格している。AO入試とは,実験の実技や面接などにより個性や適性を評価して合否を決めるものである。医学部に進学したわけではないというのが面白い。ところがこれも偶然だが,彼女が卒業する2006年に早稲田大学は東京女子医科大学と連繋を始めた。医工連繋といった異分野融合が新しい科学の創造に欠かせないと認識されたからである。彼女はその最先端の分野に飛び込んでいった。2008年から1年余りアメリカのハーバード大学医学部へも留学し,「人生何年分にもあたる刺激的な出会い」をしながら経験を積んだという。(以上新聞報道による)  小保方さんの経歴を見てみると,ことごとく偶然のチャンスを見逃さず自分のものにしてきているように見える。彼女を大発見に導いた「実験を繰り返す粘り強さ」,「常識にとらわれないしなやかな発想」,「自ら道を切りひらく行動力」が,「セレンディピティ(serendipity)」の本質といえるのかもしれない。いま受験勉強に奮闘する生徒にも大いに勇気を与えるニュースだったろうと思う。

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